「ロートンとインブルの数は近くなる」?|言い伝えを検証してみた!
ソフトダーツでは、
ロートンとインブルの数は近い数になる
という言い伝えがあります。
昔っから答えがでないんだが…
— 髙橋亮@すべて規制中 (@Hopper1977JET) July 8, 2020
累計アワードのインブル数とロートンの数字が大体同じなのは何故なのだろうか。
高レーティングだとインブル数が上回る傾向。
そういえばインブルの数とロートンの数って大体どのフライトでも同じらしい🎯
— 🅷i🆁o🅵u🅼i (@hrfmiruka) February 18, 2019
4センチの円に2回入れる確率と2センチの円に一回入れる確率が大体同じってことなのかね?🤔
納得できるような出来ないような🙄
最近、ふとしたことからダーツの様々な確率について考える機会があったので「本当にロートンとインブルは近しい値になるのか?」を検証してみました。
検証
検証① よしだのデータ
昨年後半に実際に私が投げていた月別のデータを表にしてみました。
RT | DB | LT | LT/DB | |
---|---|---|---|---|
2020/07 | 13.56 | 409 | 401 | 98% |
2020/08 | 14.57 | 408 | 426 | 104% |
2020/09 | 14.14 | 673 | 751 | 112% |
2020/10 | 14.43 | 752 | 846 | 113% |
2020/11 | 14.82 | 701 | 722 | 103% |
2020/12 | 13.87 | 404 | 414 | 102% |
左から順に、
- RT(PHOENIX の レーティング)
- DB(ダブルブル=インブル)
- LT(ロートン)
- LT/DB(インブルに対するロートンの割合(%))
となっています。この間、レーティングは 13.56~14.82 なので、それほど大きく変動していません。
これを見るとインブルに対するロートンの割合は 98~113% となっており「ロートンとインブルの数は近しい」と言っても差し支えないのではと感じます!
検証② 統計学を使って計算してみる
こじらせモードに突入です。
私個人のデータでは「おおむね近しい」と結論づけたインブルとロートンの数ですが、
- すべての人に当てはまるのか?
- 当てはまらない場合があるとすれば、どのような条件か?
ということが気になったので、統計学を利用して調べてみることにしました。
ダーツのスローと正規分布
ここでは、
- ダーツの刺さる位置ボードの中心から縦方向・横方向ともに正規分布に従う1と仮定する
- ブル率からインブル率とロートン率を計算(推定)し、両者を比較する
という方針で検証していきたいと思います。
(「いきなり “正規分布” ってなんやねん」というツッコミはごもっともですが、、)この正規分布というのは統計学の概念で「バラツキのある事象を調べると、中央の値の発生頻度が最も多く、それを中心に対称形で発生頻度が少なくなる、という現象のこと」です。この仮定は過去の論文や記事(23)でも用いられており、ダーツのシミュレーションを行うにあたっては一般的なモデルであるといえます。この仮定に基づくと、ブル率が高いほど真ん中が狙えているのでインブル率も高くなる、ということになります。
ブル率からインブル率を計算する
ブル率 $P$ を用いると、インブル率 $P_{IB}$ は以下のようにあらわすことができます。ここで “8.5” と “22” はそれぞれインブルとアウターブルの半径(mm)を表しています。
\[P_{IB}=1-(1-P)^{\frac{8.5^2}{22^2}}\]ここから、1ラウンドあたりのインブル数の期待値は $3(1-(1-P)^{\frac{8.5^2}{22^2}})$ で表すことができます。
ブル率からロートン率を計算する
1ラウンドのロートン率 $P_{LOWTON}$ もブル率 $P$ を用いて以下のように表すことができます。ここで “3” は「ブル以外、ブル、ブル」「ブル、ブル以外、ブル」「ブル、ブル、ブル以外」の3パターンを表しています。なお、このパターン以外でもロートンになる可能性はあるのですが、今回は無視しています。
\[P_{LOWTON}=P\times P\times (1-P)\times 3\]インブル率とロートン率の関係
以上で求めた 2 つの式を使って、ブル率を 0~100% で変えた場合に 1000 ラウンドあたりのインブルの数とロートンの数をプロットしてみました。
LOWTON と D-BULL の関係
ブル率が65%を越えるあたりまでは、ロートンとインブルは近しい値をとることが分かります。ブル率 65% の場合、カウントアップの平均点数は約 870 点と計算でき、これを 01 STATS に換算すると、PHOENIX で 36.3、DARTSLIVEで 109 となります。
ここから考えると、DARTSLIVEで AA15 以上、PHOENIXで AAA21.5 以上であればインブル数が優位になり法則は成り立たない、ということが言えそうです。これは「高レーティングだとインブル数が上回る傾向」という、先に引用させていただいたツイートの内容にも合致します。
ちなみに、SOFT DARTS PROFESSIONAL TOUR JAPANの大和久明彦プロが以前、以下のようなツイートをされていました。
今日はよくブラックでたわ😎 pic.twitter.com/hxq1BFDg87
— 大和久明彦✡️DYNASTY TRIPLEIGHT☪️ (@aki0009aki0009) December 11, 2020
D-BULL 302
LOW TON 95
HAT TRICK 190
圧倒的インブル率&ハット率!!!( ̄□ ̄;; というわけで、少なくともトッププロレベルになると表記の法則は成り立たないと言えそうです。
実際のボーダーはどのくらいなのかというところは気になりますが、グルーピングのクセにもよりそうですね。ボーダーあたりのレーティングの方に話をうかがってみたいところ。
まとめ
今回は「ロートンとインブルの数は近くなる」の法則について検証してみました。その結果、
- ある一定以下のレーティングのプレーヤーに対してはあてはまり、それ以上のレーティングのプレーヤーはインブル数のほうが多くなる
- ボーダーは計算上 DARTSLIVE で 15、PHOENIX で 21.5 くらいと想定される。トッププロレベルでは明らかにインブル数が多い。
ということがわかりました。
参考文献
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A Statistician Plays Darts : イギリスの統計学者による論文。ハードダーツにおいてどこを狙うべきかをプレーヤーのレベルごとに統計学的なアプローチで求めている。正規分布を基本として、より複雑なモデルも扱っている。 ↩
-
ゼロワンでアガれる確率、全部シミュレーションしました。 - 犬のむせび鳴きblog: 正規分布を前提として、乱数を用いてゼロワンでアガれる確率をシミュレーションによって求めている記事(リンク切れ)。 ↩
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